世界を変えた!? 変える!?
物理学の重大発見を徹底解説!

物理学は物の理を解き明かす学問。つまり、身の回りにある「なぜ?」「どうなっているの?」を、理論として整然と説明することが求められる学問です。過去、そして現在を生きる物理学者の研究によって、多くの疑問は解き明かされ、それは時に常識を覆し、世界を変えてきました。
2017年のノーベル物理学賞を受賞した、「世界初の重力波直接観測」もそんな出来事のひとつ。20世紀の天才物理学者アルベルト・アインシュタインが一般相対性理論で「重力波は存在する」と予言していましたが、およそ100年経った今、その正しさが証明され、人類はまたひとつ、真理の扉を開いたことになります。
今、科学技術が飛躍的に進歩したことで、測定精度は高まり、新たな真実が次々とスポットライトを浴びることでしょう。物理学を志すなら、今がチャンス。今回紹介する重大発見以外にも、さまざまな研究分野が広がっています。ぜひ、好奇心の翼を広げ、自らの知的欲求を満たしてください。

純粋な探究心を、学問で解く。それは時に世界を変える発見にもつながる

アインシュタイン100年の宿題。重力波の観察が、宇宙の進化を解き明かすカギに。


図1

2017年のノーベル物理学賞受賞でも、大きな話題となった世界初の重力波の直接観測。ニュースによって多くの人に知られることとなりましたが、皆さんは重力波がどんなものかご存知ですか?

重力波とは時空間のゆがみによって起こる“時空のさざ波”とも形容される現象です。例えば、トランポリンを時空間と仮定して、その上に重い球体を置くと、トランポリンは沈み込み、同時に周囲もゆがみます。この物体の運動によって伝わる時空のゆがみが重力波の正体(図1)。当然、重いものであるほど、時空間のゆがみも、重力波も大きくなります。

重力波を観測することは、存在を予言していたアインシュタイン自身も不可能であるとあきらめていました。なぜなら、地球に届く“時空のさざ波”はきわめて小さく、太陽ほどの質量がある天体の衝突でも、太陽と地球の距離が原子1個分ほど変化するといった極微小なものにすぎなかったからです。しかし、実験家・理論家の努力と、科学技術の進歩によって、重力波を現実のものとして実感できるようになったのです。

多くの研究者は重力波を捉えられるとすれば、半径が10kmほどながら、質量は太陽と同等の超高密度な天体である中性子星の合体によるものと予想していました。しかし予想に反して、アメリカの重力波観測装置「LIGO」が検出したのは、地球から13億光年の彼方でブラックホールどうしが衝突、合体したときに生まれた重力波であることがわかりました。このときのブラックホールの質量は太陽の36倍と29倍。理論上は予言されていた重力波の存在を直接確認できたことは賞賛され、また、広い宇宙の彼方でブラックホールどうしの衝突が頻繁に起きているという事実は、世界中の研究者を驚かせました。

2015年9月に重力波を初観測して以来、中性子星合体の重力波を含め、2017年10月時点で4回もの観測に成功しています。検出施設もアメリカ(LIGO)、イタリア・フランス(VIRGO)、そして、日本(KAGRA)が建設・整備中で、いよいよ重力波によって宇宙を調べる「重力波天文学」の幕が開けようとしています。ノーベル賞物理学賞の発表会見で、スウェーデン王立科学アカデミーの選考委員はこう讃えています。

「彼らの発見が世界を揺るがした。まったく新しく、これまで見たことのない世界を切り拓くものだ」

重力波天文学によって光では見えなかったブラックホールの衝突が観測されました。さらに発展すれば、宇宙のさまざまな謎を解く新しい「目」になると期待されています。

物理の世界を揺るがした、物理学の大発見

ニュートン力学
アイザック・ニュートン(1643-1727)


リンゴはなぜ横でも上でもなく、地面に落ちるのか?なぜ、月は地球に落ちてこないのか?そんな疑問を抱いたことがきっかけで、ニュートンは質量のあるものは互いに引き合う力があり、天体も同じ法則で運動が行われているという考えに至ったという逸話があります。地上から天体に至るすべての運動を体系的に説明できる。これが「万有引力の法則」です。
また、力と運動の関係を解明した「慣性の法則」「運動方程式」「作用・反作用の法則」で構成される運動の三法則の確立は、それまで哲学的・感覚主義的だったアリストテレスの自然哲学(力学)を覆し、現代まで用いられる物理学の礎となりました。

電子の発見
J.J.トムソン(1856-1940)


物質の最小単位は「原子(atom=分割できないもの)」である。すべての物質は原子によって構成され、それ以上に小さいものはないと考えられていました。その定説を覆したのがJ.J.トムソンです。
1897年に、真空管の中で陰極から出る発光の正体は“電荷を帯びた粒子=電子”であることを突き止め、原子よりも小さい素粒子であることを確認。この発見は、それまでの原子理論に終止符を打ち、原子の中にも電子、原子核、陽子、中性子の存在の可能性を示せたことで、核物理学の発展の足がかりとなりました。また、今日の私たちが明るい電気や電子デバイスの恩恵を受けられているのも、この発見があったからこそです。

ニュートリノ振動
梶田隆章(1959~)


ニュートリノ振動により出現した
タウニュートリノの反応候補事象
【提供:OPERA実験】

2015年のノーベル物理学賞受賞でも話題になった「ニュートリノ振動」も世界の物理学者を驚かせた発見です。もともとは1930年にオーストリア出身の学者パウリによってニュートリノの存在は予言されており、観測技術の進歩とともに研究が続けられてきました。ニュートリノ研究が新たなステージに入ったのは1998年。日本のスーパーカミオカンデ検出器を用いた大気ニュートリノ観測により、ニュートリノには振動現象が見られること、そのことから質量があることまでが突き止められました。それまでの標準理論では、ニュートリノには質量がないと考えられていましたが、この発見は世界中の研究者を驚かせ、素粒子物理学上、基本理論の見直しが行われました。

物理学を志す人だけに見える世界がある

一言で物理学といっても、その範囲は広く、電子やニュートリノのような素粒子から、ブラックホールや宇宙そのものにいたるまでスケールは異なり、宇宙物理、素粒子物理、原子核物理、物性物理、表面物理など、自然現象の数だけ裾野は広がっていきます。過去に予言、発見されたさまざまな理論・概念は複雑に絡み合い、そして、新たな真理の探究へとつながっていく、いわば、“終わりなき旅”ともいえる学問かもしれません。
そんな物理学の世界に、本格的に足を踏み入れるためには、まず先人達の理論・概念を理解しなければなりません。高校の教科書に出てくるような古典物理の知識はもちろん、数学、論理的思考を身につけること、さらには英語力も必要となってくるでしょう。これだけを聞くと大変そう…と思うかもしれませんが、物理学には、壁を乗り越えた人だけに見える、素晴らしい“知の地平線”が広がっています。重要なのは、難しい問いや理論にもあきらめない粘り強さ。そして、どんなことにも疑問を持つピュアな好奇心です。日進月歩で解き明かされている自然現象ですが、まだまだ想像力を刺激するような謎のベールに包まれていることがたくさんあります。大学で物理学を学ぼうと考えている皆さんに期待されるのは、先人の功績を受け継ぎ、知の地平線をさらに大きく広げていくことです。あるいは、研究者にならずとも、物理学は理工学分野の礎となり得るため、社会に出ても知識の汎用性は広く、あらゆる分野での活躍が可能となります。ぜひ、大きな志を持ってその扉をノックしてください。

CLOSE UP 東邦大学理学部 物理学科

大学での物理学は高校よりも一歩進んで、理論的により深く、また実験を通して自然現象の陰に隠れる法則や原理を学んでいきます。幅広い分野に枝分かれしているため、あらかじめ学びたい専門分野がある人は、大学の研究環境が整っているか確かめておくことも大切です。今回は、宇宙や素粒子などを対象とする基礎物理、物質の性質を微視的観点から研究する物性物理、未来のテクノロジー開発に貢献する応用物理の3つの領域を網羅する東邦大学の理学部物理学科をご紹介します。