やさしいだけが看護師じゃない!
広がる看護師の可能性

多くの人は、健康に毎日を過ごせることに何の疑問も持たず、当たり前のことだと思っています。そのため、ひとたび病気やケガをすると、ちょっとしたパニック状態に陥ってしまいます。そんな不安な気持ちや、耐えがたい痛みに苦悩する患者さんにとって、看護師の「やさしさ」「笑顔」「献身的な姿勢」は非常に大きなものといえます。しかし、それはしっかりした看護の知識と援助技術に裏付けられて初めて意味を持つもの。今回は、改めて看護師に求められる力と、医療の在り方やニーズが多様化している現代、広がる看護師の活躍の場について見てみましょう。

患者さんの一番そばにいる! 看護師に求められる力

白衣の天使に求められるのはやさしさだけではない

看護師を志望した理由としてよく挙げられるのは2つ。1つは「人の役に立つ仕事をしたい」で、もう1つは、自分自身や家族が入院した経験があり、そのときに「やさしく献身的に看護してくださる姿にあこがれて」という答えです。

確かに、看護師には患者さんにやさしく寄り添うイメージがあります。その「白衣の天使」のイメージの原点といえるのが、近代看護教育の母とされるフローレンス・ナイチンゲールです。シスターや職業看護婦とともにクリミア戦争の戦地に赴いたナイチンゲールは、病院の衛生状態を改善し、負傷兵を手厚く看護。その献身的な働きぶりから「クリミアの天使」と呼ばれました。

しかし、そのようなイメージを持たれることは、必ずしもナイチンゲールの本意ではなかったようです。

「天使とは、美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩する者のために戦う者である」

ナイチンゲールのこの言葉には、ただやさしく骨身を惜しまず働くだけが看護師に求められることではなく、本当に苦しむ人のために戦うのが看護師だという考えが表れています。ナイチンゲールは、看護師という職業には、むしろ「鋭い観察眼」と「よく動く手」を持つこと、何が本当に患者さんのためになるかを思考し、行動する力が求められると考えました。相手のためになるなら、やさしくするだけでなく、時には耳の痛い注意をし、厳しく接することも必要だということです。

看護や医療の専門知識に加え、観察眼や判断力が求められる

看護師の仕事は、下記の2つに大別されます。

  • 1.医療行為の補助
  • 2.患者さんのケア

患者さんを診察し、治療方針を決めるのは医師で、麻酔や手術、胸腔穿刺などの医療行為は医師にしか許されていません。一方、看護師は、血圧や体温などのバイタルチェックのほか、医師の指示に従って注射や点滴、採血などの一般的な医療行為を行うことができます。また、所定の研修を受けた看護師は、より高度な特定の医療行為を行うことが認められています。

かつての医師と看護師は、指示する側と指示される側という一方通行の関係でした。しかし、最近は医師、看護師、薬剤師、理学療法士など医療職が、それぞれの経験や専門性を生かして患者さんの治療のあたる「チーム医療」が主流となっています。そこでは医師が薬の専門家である薬剤師に薬物治療に関しての意見を求めるなど、ほかの医療職に意見を求めることも少なくありません。特に、看護師は医師よりも患者さんと接する時間が長い分、ほんのわずかな体調や病状の変化に気づくことができ、それが早めの適切な対応に生かされるケースがたくさんあります。看護師には看護に関する広くて深い知識や熟練の技術に加え、こうした鋭い観察眼や的確な判断力が求められます。

効果的な治療を行うため、患者さんと良好な人間関係を築く力も必要

患者さんのケアは、食事や入浴、移動の介助、ベッドメーキングなど、身体的なケアや、治療や健康保持・増進のため、より良い環境を保つことが挙げられます。また苦しい思いや不安な気持ちを抱えている患者さんの精神的なケアも看護師の大切な役割です。

患者さんの心理としては医師よりも看護師さんの方が話しやすいはず。患者さんが治療についての理解を深め、前向きに治療に取り組めるようにするため、看護師には良好な人間関係を築くための他者への敬意や共感力、コミュニケーション力が求められます。

また、患者さんの疑問や不安は治療そのものに関することだけでなく、退院後の生活や食事のことなど、多岐にわたります。必要に応じてほかの医療職や福祉職などと連携をとることも看護師の役割で、ほかの医療スタッフと接する機会も多い分、看護師にはチームの情報共有・情報交換の要になったり、調整役を務めたりすることが期待されます。

したがって、看護の基本概念や理念、患者さんの健康状態を評価するフィジカルアセスメントや診察や治療を補助するために必要な技術の習得は、看護師として活躍するための基本中の基本です。そのうえで成人看護学、小児看護学、母性看護学、地域看護学、在宅看護学など、各専門領域の幅広い知識を修得しなければなりません。また、ホスピタリティ精神やコミュニケーション力を高めるとともに、自分で問題を発見し、考える力を高め、常に疑問をもって学び続ける力を身につけることも必要です。

社会の変化とともに看護師の活躍の場はどんどん広がっている

これまで看護師の活躍の場といえば、病院や診療所などの医療機関が中心でした。しかし、高齢者人口の増加に伴い、老人福祉施設や介護事業所で働く看護師も増えています。また、医療費抑制のため、病院の在院日数の短縮化が図られ、住み慣れた自宅で療養したいと考えるなど、医療へのニーズも多様化しており、地域医療のニーズが高まっていますが、そこで求められるのは「生活」という視点です。

ナイチンゲールは、『看護覚え書』で次のように書いています。

「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また食事内容を適切に選択し適切に与えることーこういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味すべきである。」

患者さんの中には、病気や障害を抱えながら人生を過ごさなければならない人もいます。いったんは元気になっても、環境=生活のあり方が悪ければ、再び病気になったり、ケガを負ったりすることもあります。それだけに、とりわけ地域医療においては「病気は生活が創る」という発想でケアにあたることが求められます。

また「生命力」は人間が作り上げた「生活」や「社会」に影響を受けます。その意味でも、患者さんの病気やケガだけを見るのではなく、同じ一人の「生活者」として援助する姿勢を身につけることが大切だといえるでしょう。

専門看護師、認定看護師としてキャリアップも可能

医療はどんどん高度化、複雑化しており、大学で看護の基礎的な知識と技術を学び、一定期間の実務経験を積んだのち、さらなるステップアップを図るには、専門看護師や認定看護師の資格認定制度が設けられています。専門看護師は高水準の看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識や技術を深めた看護師で、がん看護など13分野が特定されています。認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践ができる看護師で、救急看護など21分野が特定されています。

■ 専門看護分野一覧[ 13分野]
がん看護 精神看護 地域看護 老人看護 小児看護 母性看護 慢性疾患看護 急性・重症患者看護 感染症看護 家族支援 在宅看護 遺伝看護 災害看護

■ 認定看護分野一覧[ 21分野]
救急看護 皮膚・排泄ケア 集中ケア 緩和ケア がん化学療法看護 がん性疼痛看護 訪問看護 感染管理 糖尿病看護 不妊症看護 新生児集中ケア 透析看護 手術看護  乳がん看護 摂食・嚥下障害看護 小児救急看護 認知症看護 脳卒中リハビリテーション看護 がん放射線療法看護 慢性呼吸器疾患看護 慢性心不全看護

CLOSE UP 和洋女子大学 看護学部

最近は、たとえがんにかかっても通院で化学療法を受けられるなど、負担の少ない治療法や治療薬が開発されています。治療しながら働き続ける人や病と上手に付き合いながら生きていく人が増えると、職場復帰や退院後の生活、自宅療養など、看護においても患者さんの生活を考える必要性がより一層増してきます。次ページからは、生活科学を起点とした高い知識・技能を身につけ、自立した女性を育ててきた伝統を生かし、2018年4月に開設する和洋女子大学の看護学部の学びを紹介しましょう。