女優 趣里(しゅり)さん

女優 趣里(しゅり)さん 受験勉強で身につけたことは考え方次第でプラスになる。今では、そのときに学んだことすべてがだいたいどこかで役に立っています。

ドラマ『ブラックペアン』(TBS)のクールな看護師役が記憶に新しい、女優の趣里さん。デビュー以降、次々と話題作に出演し、注目を集めている彼女ですが、実は大学に入る前は、ずっとプロのバレエダンサーをめざしていたそうです。今回はそんな趣里さんに、10代の頃の思い出話や受験・大学時代、そして、女優としての現在についてお話を伺いました。

10代で味わった大きな挫折がその後の人生の転機に

現在、ドラマや映画などで活躍中の趣里さんですが、女優になる前はバレエダンサーをめざしていたそうですね。どんな10代を過ごされていたのですか?

趣里さん(以下 趣里)

中学を卒業するタイミングでイギリスのバレエスクールのオーディションに受かって、16歳からロンドンで生活していました。ところが留学して2年ほどが経ったある日、レッスン中に大きな怪我をしてしまって。最初、自分の身に何が起こったのかしばらく理解できず、“一度寝て起きたら元通りになっているかも”などと考えて寝てみたんですが、変わるはずもなく……。

そこでバレリーナの夢を断たれてしまうんですよね。

趣里

最初はすごく思いつめていました。でもしばらくすると、生きていくためには何か仕事を見つけなくちゃいけないと考えて、ひとまず大学に入って勉強しないとなって。きっと大学に行けば、いろいろなことを学んで新しい道が切り拓かれるという漠然とした期待があったんだと思います。それで勉強し始めて、高卒認定試験を受けました。

大学はどうやって選んだのですか?

趣里

まだ頭のなかにはバレエのことが残っていて、やはり自分は芸術に関わることが好きだなと思って芸術学科を受験することにしました。高卒認定試験は幸いあまり苦労せずに済みましたが、大学受験は大変でした。

科目の得意・不得意もありましたか?

趣里

2年間のロンドン暮らしのおかげで英語は問題なかったんですが、世界史がもう壊滅的な状態で……。だから、予備校に通って必死で勉強しましたね。絵にして覚えたり、替え歌を作ってみたり。でも勉強すればするほど、“絶対に落ちちゃいけない”って、結構、精神的に追い込まれてしまって。

どうやって乗り越えたんですか?

趣里

思い出したのがバレエのオーディション。オーディションで失敗するたびに落ち込んでいたら身が持たないんです。この時も“大学に落ちたくらいで人生が終わるわけじゃない”と思い直したら気持ちが楽になりました。あと、予備校で良い友だちに恵まれたのも大きな支えになりましたね。勉強を教え合ったり、くだらない話をして一緒に息抜きをしたり。おかげでずいぶん前向きになれた気がします。

受験勉強で身につけたことは考え方次第でプラスになる

大学生活はいかがでしたか?

趣里

自分がこれまで知らなかったことを学べるのは楽しかったですね。歌舞伎とか絵画などの専門科目はもちろん興味深かったのですが、たまたま履修した心理学がすごくおもしろくて。人はどういうときに心が動くのかとか、仕事に役立つようなこともたくさん学びました。実は今も機会があれば心理カウンセラーの資格をとりたいと思っているんです。
他にも最近はアメリカ文学の授業で学んだ小説を原作とする舞台作品に出演させてもらったり、韓国人の演出家の方とお仕事させてもらったときに韓国語の授業を思い出しながら会話をしたりと、大学で勉強したことが役立つシーンが意外とたくさんあって驚いています。

しっかり学びと向き合った結果、点と点がつながっていったということでしょうか。

趣里

そういった意味では、受験勉強も同じでしたね。確かに古典の勉強には苦労しましたし、世界史の点数は壊滅的でしたが(笑)、勉強したことはだいたいどこかで役に立っているんです。「受験勉強は、社会で役に立たない」って言いますが、自分にとってプラスにできるかは捉え方や考え方次第だと思います。

大学在学中に女優をめざすようになったと伺っています。

趣里

学生時代にふと、昔に観た岩松了さん(劇作家・映画監督)の『シェイクスピア・ソナタ』という舞台を思い出したんです。バレエをしていたころに、辛いことがあって落ち込んでいたときにその舞台を観て救われた記憶があって。それで自分もあんなふうに人の心を動かすことができるような仕事がしたいなと。それがきっかけでアクターズクリニックという演技学校に通い始めたんです。

女優という目標に向けて本格的に始動されたんですね。

趣里

でも、まだちゃんとめざすという感じではなかったですね。向いてないかもしれないし、どうなるかわからないけど経験してみようと。それでアクターズクリニックで塩屋俊さんという恩師に出会い、演技することの喜びとか楽しさ、苦しさなんかをイチから教えてもらって。そのうえ、“お前はそのままで大丈夫。やったほうがいいよ”と、やさしく背中を押してもらったので、それでようやく女優になる決心がつきました。

「大丈夫」というのはシンプルで力強い言葉ですね。

趣里

私が葛藤したり迷ったりしていることを全部わかってくれていたんだと思います。それから本当は私が女優になりたいと思っている気持ちにも。言葉にしたことはなかったんですが、全部、気づいてくれてたんですね。この言葉は今もずっと支えになっています。

女優 趣里(しゅり)さん