マンガ家 石塚 真一さん

『岳』や『BLUE GIANT』などの人気作を描く石塚真一さんは、マンガ家としては異色だらけのキャリアをお持ちです。アメリカの大学に留学し、クライミングに没頭。帰国後に就職した会社は1年で倒産。そこから、未経験でマンガ界に飛び込み、いきなり小学館新人コミック大賞一般部門に入選。以後、連載する作品は多くの賞を受賞しています。そんな石塚さんの高校時代から、マンガ家となった現在にいたるまでの紆余曲折をお伺いしました。

勉強として考えるとややこしい “知りたい”学びは苦痛じゃない

アメリカへ留学するくらいですから、やはり英語は得意だったのですか?

石塚

英語は「アメリカの大学に行く」と決めてから、あわてて勉強したんです。アメリカに渡ったら、生活するのに絶対必要だし、勉強というよりも、生きていくためのスキルとして学ぼうとしていました。『ナンバーズ』という、ひたすら数字の聞き取り練習をする教材をやりましたね。逆に、数字で書き出す訓練もしました。お金や距離、日付や時間など、数は絶対に使うものですから。来る日も来る日も聞き続けて、あるとき「これで完璧だ」と思えたときは、自分が何か新しい武器を装備したような、そんな感覚でした。

実際にアメリカではどうでしたか?

石塚

会話をするときに、「本当にこの表現で合っているだろうか」という感覚を大事にしていました。例えば、お店で「これください」というとき、英語だと「Can I have this?」で間違ってはいないんですが、なんか、自分ではそうではない気がして。実際にそう言う人もほとんどいませんし。じゃあ、何て言うんだろうと、注意して聞いてみると、「I'll take this」とか「~, please」という言葉を使っているんです。そうやって、周りの人が使っている英語を覚えていくことで、英語表現を身につけていきました。

生きた英語の勉強ですね。

石塚

学校で習ったときは難しくて嫌だった、現在完了形とか過去完了形なんかも、実際に会話するうえでは、みんな普通に使っているんです。勉強として考えると、ややこしくて大変なんですが、自分が言いたいニュアンスに一番近い表現を知りたいと思って学ぶと、それほど苦痛ではないということもわかりました。

では、今後の抱負や、描きたいテーマなどお聞かせください。

石塚

今は宮本大が海外でジャズプレイヤーとして活躍する『BLUE GIANT SUPREME』を連載中なので、これに集中したいと思っています。そのために、音楽も絵も、まだまだ勉強しないといけないことがたくさんあります。そういう意味では、皆さんと同じ受験生ですね。

 

受験生の皆さんにメッセージを。

石塚

気づくのが遅れたけど、今思うと、大学へ行って本当によかったなと思います。卒業後、みんな社会に出て、いろんな分野に分かれていく、その手前でいろんな人に会うことができて、とても豊かな時間でした。
僕は、大学に入ってクライミングと出合いました。そこで「ゴールを設定したら、そこからやるべきこととスケジュールを逆算して備える」ということを学びました。そのことを含めて、大学での数年間は、今の自分にとって必要な時間だったといえます。みなさんの大学生活も、豊かな時間になるように祈っています。
まあ、受験は大変だと思うので、僕から偉そうなことはいえませんが、とにかく皆さんを応援したいです。今はキツいかもしれないけれど、一歩ずつ進んでいけば、必ず山頂にたどり着きますから。

 

Profile マンガ家
石塚 真一さん


1971年生まれ。茨城県出身。都内の男子高校から南イリノイ大学新潟校に進学。2年学んだのち渡米し、南イリノイ大学およびサンノゼ州立大学へ留学。美術と気象学を学ぶ。ルームメイトの影響でロッククライミングにのめり込み、マッキンリー登頂を目標に、各地の山を踏破する。27歳で帰国し、IT系企業に就職するものの1年で倒産。未経験でマンガ家に転身し、2001年に、第49回小学館新人コミック大賞一般部門に『This First Step』で入選。代表作となった『岳 みんなの山』(単行本タイトルは『岳』)は第1回マンガ大賞、第54回小学館漫画賞一般向け部門、第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。2013年から連載を始めた“音が聴こえるジャズマンガ”『BLUE GIANT』もヒットとなり、第62回小学館漫画賞一般向け部門、第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞している。現在はヨーロッパ編となる『BLUE GIANT SUPREME』をビッグコミックにて連載中。

マンガ家 石塚 真一さん