書家 中塚 翠涛(すいとう)さん

テレビでも活躍する女流書家、中塚翠涛さん。
『30日できれいな字が書けるペン字練習帳』(宝島社)シリーズをベストセラーに導いた美文字の伝道師は、空間やモノを「書」を用いてデザインする仕事も手がけている。「書」の師匠に出会った大学時代から卒業後、自由な発想で「書」の新しい可能性を広げていった足跡に迫った。

ウエディングドレスのデザイナーになりたかった

女流書家として、テレビでも活躍する中塚さんが「書」を学び始めたのは4歳の頃だそうですね?

中塚 翠涛さん(以下 中塚)

正しくは、4歳から筆あそびをスタートしたという感じですね。「お手本通りに!」という教育を受ける前に「筆ってたのしい」という感覚に触れられたことが今の自由な作風につながっているのかもしれません。

書家になりたいと思ったのもかなり早い段階からだったのですか?

中塚

いえいえ、小中学生の頃は、書家になりたいなんて、まったく考えていませんでした。その頃なりたかったのは、ウエディングドレスのデザイナーだったかな。地元の岡山県で毎年開催されていた桂由美さんのブライダルショーを見て、お嫁さんに憧れるのでなく、むしろドレスをつくっている人に興味を持ってしまって……。モノをつくって誰かに喜んでもらいたいという感覚は当時からあったみたいです。

それでも小学生時代から書道コンクールで賞を取ったりなさっていますよね?

中塚

当時は、とにかく両親が喜んでくれるのがうれしくて頑張っていましたね。むしろ、自分としてはファッションへの興味のほうが強くて、海外のファッションショーをレポートする『ファッション通信』というテレビ番組を見て、海外に行く夢をふくらませていました。それが中学生くらいかな。

「目的を持って受験勉強をしたほうがよい」

そんな中塚さんの高校時代はどのような感じだったのでしょう?


中塚

とにかくポジティブな高校生でしたね。たいがいのことは「なんとかなる!」と思っていました(笑)。ただ、将来についてちょっとずつ考えはじめたのはこの頃からですね。きっかけは、担任の先生に「目的を持って受験勉強をしたほうがよい」と言われたこと。それまでは、与えられた問題に正しく解答していればよかったので、書道でいえば、お手本通りに書いていれば評価されていました。ところが「自分の好きなことを見つけて、それを追究しなさい」と言われて、どこか突き放されたような気分でした。

そこから「書」の世界とより真剣に向き合うようになるのですね?

中塚

先生から「一芸を伸ばす道もよいのでは?」とアドバイスを受け、「書」をしっかり見つめ直してみようと考えました。それはひたすら練習に没頭するのではなく、「書」の世界を別の角度から客観的に見るということ。例えば、「書」の背景にある歴史や文学作品の知識 を深めたり、書道の理論を改めて学び直したり……。ここで、目的を持って勉強する楽しさを知ったのと同時に、「書」に対する姿勢も「お手本通り」から次のステップに進んだ感覚がありました。