関 泰一郎教授

選択する時の判断基準は“おもしろい“か“おもしろくない“か。 大学をおもしろがれる学生は、伸びます。

卒業研究で研究室の1期生として携わって以来、“おもしろい“をキーワードに突き進んできた関泰一郎先生。生命化学の分野での、血液の凝固についての研究から始まり、肝臓の再生や抗がん作用のある成分の発見など、世界中から注目を集める研究成果を発表してきました。 現在も研究室の長期的な研究テーマを継承しつつ、学生がもたらす新鮮な発想を生かして研究の幅を広げています。ご自身の研究者生活の原点を振り返っていただきながら、大学研究室の魅力についてうかがいました。

世界中の研究論文で引用される血液の凝固と線溶に関する研究

関先生が率いる栄養生理化学研究室では、長年にわたり血液の凝固に関する研究を続けられていますね?

関教授(以下 関)

元々は血液の生理学的な研究です。当初は農芸化学科で、食品由来 の成分との関連を追究することから始まりました。
血液には、出血した時に凝固する性質に加えて、一度固まった血液が自然に溶ける「線溶」と呼ばれる性質があります。血が凝固して出血を防止した後に溶け、血液の流れを確保する機能です。この凝固と線溶現象を中心に、研究を続けてきました。

1980年代以降、日本の食生活は一気に多様化が進み、脂質の摂取が増えるなど食生活が急激に変わりました。それに伴い問題となってきた生活習慣病には多くの病気がありますが、その最終段階では血が固まることで死に至ることが多いんですよ。心筋梗塞もそうですし、脳梗塞もそうです。僕たちの研究も、血栓症を起こす血小板の働きを抑制する成分がニンニクに含まれていることを、僕の恩師の有賀豊彦先生が世界に先駆けて発表したことから始まっています。以来、その研究が広く注目を集めて評価をいただいてきたのは、ちょうど時代が求めるものと研究テーマが、うまく重なってきたからでしょうね。

これまで数多くの世界に誇る成果を挙げてこられましたが、そのなかでも特に重要なものはなんでしょうか?


特に2つの研究の論文は、権威ある専門雑誌に掲載され、世界中の研究者から数多く引用されていますね(※1)。
1つはニンニクの香気成分である『ジアリルトリスルフィド』に、強力な抗がん作用があることを見つけた研究です。従来抗がん作用があると思われていた成分には実は抗がん作用がなく、『ジアリルトリスルフィド』にこそ抗がん作用があることを突き止めたもので、それまでの常識を覆した発見です。

もう1つが、血栓が溶けることを阻害するTAFI(トロンビン活性化線溶阻害因子)と呼ばれる物質についての研究。このTAFIは肝臓で作られるのですが、実は肝細胞の増殖に関わっていることを世界で初めて解明しました。将来的には、肝臓の再生治療などに役立つ可能性があります。
いずれも血液の凝固や線溶に関わる生化学の研究から始まったものですが、研究が広がるにつれ、血液の話だけでなく広範囲な分野からも大きな注目を集めるようになりました。多方面に研究の成果を発信しているので、よく知らない人には「いったい何を専門に研究している人なんだろう?」と思われているかもしれません(笑)。

  • ※1研究論文の被引用件数が多いことは、その研究が高く評価され、数多くの研究に参考利用されていることの証