ゼミ・研究室の特徴、取り組み、特色などを掲載しています。

ゼミ研究室

文学部 哲学科
ジロー・ヴァンサン ゼミ(分野:古代中世哲学)

指導教員 ジロー・ヴァンサン 助教

1999年にフランスのパリ第一大学ソルボンヌ大学大学院哲学研究科を修了。2010年にはボルドー第三大学で哲学博士の学位を取得。2013年からの京都大学白眉研究者を経て、2016年より現職。

哲学の知識と考え方を身につけ、人間と社会との関連を理解する

専門分野

哲学を通じて自分と社会の関係を知る


ゼミでは幅広い哲学者のエッセンスを学
んでいく

高校の世界史の授業でその名を学ぶアウレリウス・アウグスティヌス。プラトンの古代ギリシア哲学をベースにした著作や考え方を通じて、当時の西欧哲学とキリスト教に大変革をもたらした人物として知られている。神の存在と人間に自由意志があることを証明したといわれるその論理は、本人が西暦430年に亡くなった後も生き続け、中世まで強い影響を残した。

フランスで生まれ育ったジロー・ヴァンサン先生は、大学・大学院を通じてアウグスティヌスの哲学を研究。またその基盤となったプラトン、アウグスティヌスの影響を受けた中世の哲学者トマス・アクィナス、さらに日本の哲学まで幅広く研究してきた。

「アウグスティヌスは、時間、美、知識、自由などの認識について新しい考え方を提示し、当時の社会の概念を一変させました。その影響力に強い興味を抱き、彼の研究に入ったのです。その後、日本の京都学派の哲学とプラトン主義との関連について、京都大学大学院で研究に取り組みました」

哲学は、一つの物事を深くつき詰める学問だと思いがちだが、実は非常に幅広く、リベラルな側面も強い学問でもある。

「例えば、美とは何かを考える際にある作品を見ます。その際には芸術全般のほか、作品の国、歴史なども知る必要があります」

こうした知識を得ながら思考を深めていくことで、自分と周囲の物事との関係、つまり普段の生活や社会への理解につながる。そこが哲学の魅力とジロー先生は語る。

「哲学におけるすべての“問い”は、人生に必要なものです。そのため哲学は、私にとって最もおもしろいテーマなのです」

ゼミでの学び

根源的な問いを通じて深い理解力と思考力を育む

ジロー先生のゼミは、3年次からスタートする。3年次のゼミでは、毎回、「美とは何か」「情念とは何か」などのテーマについて、テキストを元に基本的な知識を学習。さらにディスカッションを通じて思考を深めていく。テキストは、アウグスティヌス、アリストテレス、キケロなどの著書から要点を抜粋したものを使用。幅広い哲学者のエッセンスを学ぶことができる。

「3年次は、様々な哲学者の言葉をできるだけ易しく解説しながら、問いや物事に対する多角的な視点を磨いていきます。また、各テーマを普段遭遇するシチュエーションに置き換えながら、日常生活における哲学的な考えを理解していきます」

こうした学びの集大成が、4年次に取り組む卒業論文だ。先生の設定したテーマを学ぶ3年次とは違い、卒業論文のテーマは、あえて学生自身が選ぶ形にしているという。

「大切なのは、自分で考えることです。論文では、自分の意見を述べる必要があるだけではなく、自分の意見を述べるための理由が必要です。そのためには設定したテーマに関する理解や、文献など幅広い知識を調べていくことが必要です。卒業論文を通じて、こうした学びができます」

幅広く学び、深く思考することを重視しているジロー先生。同ゼミでは、哲学の学びを通じて、人間や社会に対する根本的な理解力や思考力を育んでいる。

「哲学は、あらゆる学問に関係しています。生物学は生き物そのものを学びますが、哲学では『生』とは何かを考えていきます。経済や芸術、法律も同様です。近代科学を開いた天文学者のガリレオや数学者のデカルト、フランス革命に影響を与えたルソーも哲学とは無関係ではありません」

高度な知力を備えたAI に人格を認めるか、医療がすべての病を克服すれば人間の生の意義はどうなるのか…。科学技術の進化が従来の倫理の範疇を越えつつある今、こうした難題を解決し、社会を革新する知恵が、このゼミから生まれるかもしれない。