生物工学

生物工学の学問分野で学べるカリキュラムや将来活躍できる場などを調べて、生物工学に関する興味を広げよう。

発展途上にある注目の学問領域

何が学べるのか

生物工学では細胞や遺伝子などの機能や構造を学び、研究を行う。生物工学という言葉よりも、バイオテクノロジーという言葉の方が、なじみ深いかもしれない。 生物工学には 2 本の柱がある。ひとつは多種多様な生命現象、つまり遺伝子情報などを解明すること、もうひとつは解明された遺伝子などのメカニズムを応用し、社会や人に役立つ新しい物質や技術を開発することである。

ここ数十年で分子生物学は飛躍的に発達し、ヒトの全遺伝情報の解読を行ったヒトゲノム計画が2003年に完了、ポストゲノムの時代へと入った。しかし、遺伝子や生体物質について得られた膨大な情報を統合・応用するための学問体系は、いまだ発展途上にある。生物工学は、理学・工学・農学・医学・薬学などの領域を有機的に統合しながら、学問体系の確立および物質・技術の両方のモノづくりをめざしている注目の学問領域といえる。

また生物学との大きな相違点は、これまでに生物学分野での基礎研究によって解明された多くの現象や、分子や細胞のメカニズムについての理解を利用し、産業や医学・薬学への応用をめざすところにある。

再生医療の応用が期待されるiPS細胞のさらなる展開など、注目される研究分野として、遺伝子の組み換え技術を応用し、細胞の融合や突然変異などを行う遺伝子工学、ある特定の細胞の状態を人工的につくり出し、がんなどの疾病原因の解明や細胞の機能研究などを行う細胞工学、生体を構成するタンパク質の構造の原子レベルでの解明や、構造的変化を起こし人工的なタンパク質の設計をめざす構造生物学、コンピュータを用いてゲノム配列データから配列解析を行ったり、シミュレーションによってタンパク質などの構造・機能を解明したりするバイオテクノロジーにITを応用させたバイオインフォマティクス(生物情報科学)などが挙げられる。

生物工学は、生きているものを対象とするために、その成果は自然環境に影響を与えることが予測される。遺伝子工学におけるクローン技術のように、倫理観が厳しく問われることもあり、研究が及ぼす影響を、冷静に、客観的に見定める目も必要である。発展途上の学問であり、前例がない未知の部分も多く存在するが、幅広い分野との連携で、より発展することが期待されている。

学べる学科

  • 生物工学科
  • 生命工学科
  • 応用生物化学科
  • 生物生産科学科
  • バイオサイエンス学科 他

どのように学ぶのか時間割をチェック

大学内に植物工場があり、細胞の仕組みなど、多くのことを学べます

玉川大学 農学部 ※ 生命化学科 3年
K・Yさん(北海道 私立藤女子高校卒)

3年前期 MON TUE WED THU FRI
1 細胞生物学 農薬化学 栄養生理化学
2 食品衛生学
3 生命化学実験II 専門領域研究
4 生命化学実験II 生命化学実験II 生物化学III
5 科学英語
6

ひと言コメント

高校時代、化学と生物の授業が好きで、大学でも両方の知識を深めていきたいとい考え、どちらも学ぶことができる玉川大学農学部生命化学科に進みました。玉川大学にはLEDパネルを光源にして栽培実験や研究を行い、実際に野菜などの販売も行っている植物工場があるのが大きな特徴です。特に、夏休みや春休みに行われる集中講義の「植物工場実習」では、植物工場について詳しく学び、育て方の違いによる植物の成分の差異を知ることができます。また「細胞生物学」は復習が大変な授業でしたが、細胞の仕組みについてたくさんのことを学べるおもしろい科目でした。授業によってはついていくのが大変なものもありますが、楽しんで学ぶことができています。

※2017年 4 月より農学部は生産農学科、環境農学科、先端食農学科へ改組される予定です。

気になる授業

九州工業大学 情報工学部 生命情報工学科

微生物工学

ゲノムの配列情報を基に、カビやインフルエンザ、グラム陽性細菌といった微生物の種類・代謝・培養・利用法などについて、専門知識と技術を修得。パンデミック、免疫などの感染症についても学び、医療、創薬、食品、環境などの問題解決に応用できる能力を養う。

遺伝子工学

遺伝子工学に用いられている組換えDNA技術などの基礎技術や、医療分野などへの応用について学習。「組換えDNA技術(遺伝子工学で用いる酵素・大腸菌)」「DNAの分離・分析技術」などを学んだ後、「DNAライブラリーの作製」「DNAシーケンス法」などにも取り組む。

生物プロセスシステム工学

ミクロおよびマクロなバイオプロセスについて、基本的な現象の理解と、解析法などについて学ぶ。細胞の遺伝子発現制御や代謝ネットワークシステムの解析、バイオリアクターや生体プロセスのモデリングや最適化、動特性解析などについて理解を深めていく。

将来のフィールド

主な活躍の場

医薬品、食品、化粧品、酒造メーカーなどの企業 バイオテクノロジー関係 大学や国立機関の研究職 官公庁 など

生物工学の知識や経験を生かせる医薬品・食品・化粧品、酒造メーカー、バイオテクノロジー関係などの企業に就職する人が多い。研究職では、修士以上の学位を求める企業が多く、また、専門性を求められるため、ほかの工学系と同様に大学院への進学率は高い。

官公庁、国立の研究所などの研究機関、さらにはテクニカルエンジニアやシステムエンジニア、シンクタンクなどの分野へ進む人もいる。

めざす資格・受験資格など

危険物取扱者(甲種・乙種・丙種) バイオ技術者認定試験 技術士(補) 食品衛生管理者(任用) 中学校・高校教諭1種免許

こちらから大学情報を検索できます。

学びの最前線を知る!

イマナビ 遺伝子組み換えの蚊で、感染症媒介を防ぐ

夏の蚊は困った存在。しかし、蚊の本当の怖さは、感染症にある。ジカ熱やマラリア、デング熱などの深刻な感染症の原因となる原虫やウイルスなどを人へと媒介する。蚊の駆除には殺虫剤が使われるが、乱用すると、殺虫剤が効かなくなる耐性を獲得した蚊が発生する危険性もある。そこで、蚊の遺伝子を操作して、感染症を防ぐ研究が進んでいる。

自治医科大学と農業・食品産業技術総合研究機構のグループは、細胞が自ら死滅するアポトーシスを引き起こす遺伝子を使い、唾液腺がつぶれ、唾液をほぼ持たない蚊をつくり、マラリア感染と蚊の唾液との関連を調査。また、遺伝子操作によって蚊を不妊化する研究も進んでいる。不妊の蚊を自然界に放ち、繁殖を制限して子孫を残せないようにする作戦だ。オスの蚊の遺伝子を組み換え、野生のメスと交配しても、生まれた蚊が成虫まで成長しないようにした例もある。世界保健機関(WHO)は、感染症を防ぐための遺伝子操作による蚊の新種づくりを推奨すると声明を発表した。その一方で、意図しない生物種を絶滅させたり、別の害虫を増加させたりするなど、生態系を大きく変える可能性を指摘する声もあり、効果の持続性や生態系への影響を慎重かつ長期的に調べる必要がある。